消えない貴方の感触


熱すぎる部屋の温度が思考を鈍らせる。
自分の下で乱れ艶やかに啼いているのは、ずっと憧れていた人。

「・・・んっ、アッ・・・ぁあ、ん・・」

背を仰け反らせながら喘ぐ声は、想像以上に甘くあまりにも妖艶で、身体は熱くなるばかり。
背中に回された腕が縋るように自分を求め、彷徨う。
それに応えるように更に奥へと抱き込こんで、馬鹿みたいに何度も何度も名前を呼び続けた。

「・・・ッ、・・ハ、イドさんッ、・・っハイドさんッ!」

快楽を与える側なはずなのに、何故か反対に喘がされるぐらいおかしいほどの快楽。
そんな意識の中で必死に考えようとしたけれど、目の前の誘惑的な情景に理性は戻ってはくれなくて。
ただただ、与えられる夢のような快楽を貪るように求めていた。



ずっと閉じ込めておいた感情なのに。
一度顔を出したそれは、押し寄せる波のように留まることなく溢れだしてしまった。



*



翌日俺は、ベッドに寝そべったままメッセージの書かれた白い紙をボーっと眺めていた。

飲みにさ誘われて、二次会も兼ねて俺の部屋に戻って二人でまた飲んで。
気づいたら、ベッドの上でhydeさんを抱いていた。
鈍る思考の中でもなんとなく覚えているのは近づいてくるhydeさんの唇とか、誘うように寄せられた目線とか・・・そんなものばかりで、どうしてそんなことになってしまったのか肝心なところが思い出せない。

目を覚ましたら既にhydeさんの姿はなくベッドの脇に設置されたボードの上へとこの紙だけが残されていた。

 『 ごめん。
   仕事だから先帰る。』

そんな簡潔な言葉だけが描かれた紙を、穴が開くのではないかというぐらいずっと見ている。
最初に書かれた、”ごめん ”の一言ってどこに掛かるんやろ、とか考えてみたり。
先に帰ることへの”ごめん”なのか、それとも昨晩の行為すべてに対しての”ごめん”なのか。
後者やったら、嫌やな・・・とか、また勝手に考える。

「あ゛ーーーー。」

何度見ても結論の出ない紙を手にしたまま、ごろんとベッドの中で寝返りを打つ。

「・・・綺麗、やったなー・・・。」

恍惚と零れた独り言。
未だに脳裏に焼きついて離れない、自分の下で乱れる妖艶な姿。
それなのにどこか幻のような錯覚にも陥りそうになる。
そのぐらい、あまりにも、夢のような出来事だった。

余裕もなくて、自分がどうなってしまっていたのかまったく覚えてもいない。
嫌われてたら嫌やな・・・
ちょっと弱気な予感が頭を過ぎって・・・。


半分顔を埋めたシーツと枕。




そこにはまだ あなた の香が残っていた。






  Curse (yasu×hyde)







そんな夢のような夜の後にも、いつもの日常は訪れる。

どこかまだすっきりとしない思考のままの仕事の合間。
空き時間、タバコを手に用意されていた雑誌を手にとる。
その中にhydeさんの姿を見つけた。
思わず昨晩の様子や表情が頭に浮かび顔が熱くなり、あわてて雑誌を閉じる。

「何を慌てとんねん・・・」

そんな自分の情けない姿に小さく独り言を吐いた。

ずっと憧れてきた人。
いつからその憧れが愛情へと変わっていったのか分からない。
ふと気づけば、異性に向けるそれと同じ想いを感じていた。
気づいても伝わらないはずの想いだったのに。
ずっと閉じ込めておいたはずの想いだったのに。

悪戯に訪れた夜のおかげで、今その想いは自分でも抑えきれない勢いで溢れ出している。

好きになったことを後悔はしていない。
けれど、不安になってしまうのは相手の意思が読めないから。
一体、あの夜は何を想い何を伝えようとしていたのか。
いくら考えてみても答えなんて分かるはずがなかった。
それもそのはず、出逢ってから数年たった今でも、まるで違う世界の住人みたいにhydeさんの心が読めないでいるのだから。

閉じていた雑誌を、またゆっくりと開く。
そこに映る彼は、凛とした涼しげな表情で佇んでいる。

・・・一体どういうつもりやったんやろ・・・。

何度考えても答えの出ない疑問が、頭の中を回り続ける。



*



それから時は刻々と過ぎて、気づけば逢わずに2ヶ月が経とうとしていた。
相手の意思も読み取れず、結局連絡もできないまま時間だけが無情に過ぎていく。
また飲もうって言ってくれたのに、向こうから連絡が来ることもなかった。

それでも一度あふれ出した想いはどんどん嵩を増すばかりで、忘れることなんてできない夜を思い出させ何度も自分を追い詰めた。

「・・・今、何してるんやろ・・・」

着信履歴も受信メールも、目当ての人からはまったく音沙汰の無い携帯を見つめ呟く。

「うわ、火!火!yasu、煙草、火!!!」
「へ?」

片言の日本語のように単語を並べるkiyoの慌てた問いかけに、はっと我に返る。
言われて手にした煙草を見るといつの間にそんなに短くなったのか燃え殻がぽたりと落ちた。

「う、わっ!」

灰皿へと押し付けようと立ち上がった途端、その燃え殻がもう片方の手の甲へと落ちる。

「うわ、熱っ!!!・・・・って、う、うわ、痛っ!!!うわ!!!」

慌てて手を払い後ずさった所で椅子の脚に躓き、思わずよろけた所に椅子が倒れこむ。
しこたま打った脛と煙草の燃え殻によって赤く炎症する手の甲を押さえ、その場にうずくまる。

「つぅ〜・・・・」

・・・・・格好悪〜。

一部始終を見ていたメンバーとスタッフが必死に笑いを堪えている。
というかメンバーは既に大笑いを繰り広げている。

「笑うな、ぼけぇ!・・・・冷やしてくる!!」

入り口近くで一番大笑いをしているka-yuの背中に、打ったほうとは逆の足で蹴りを入れ部屋を出て、勢い良く扉を閉めた。


手を冷やしながら目線をあげた先の鏡に映る自分。
余りにも情けない表情で、自然とため息が出た。

「俺、何やってんやろな・・・」

忘れることも踏み出すこともできない。
いつまでも、理由の分からない夜に縛られている。

ふと気がつけば考えるのはhydeさんのことばかり。
やっぱり一時の気の迷いってゆうやつやったんかな。
お酒入ってたしたまたま傍に居たから・・・俺やなくても良かったんかな・・・。
それとも連絡が無いのは嫌われたから?

それは嫌やな・・・と、ついつい弱気な考えに飲み込まれてしまいそうになる。

最初以上に情けなく映る鏡の中の自分。
そんな弱気な気分を取り払うように、ふるふると勢い良く頭を振り洗面所を出た。


戻る廊下の途中、思わず目を疑った。

「あ・・・・」

目の前で止まった小柄な人。

「久しぶり。」

そう言って少し頬を染めて笑った顔。

「hyde、さん・・・」

挨拶を返すのも忘れ呆けた表情で立ち尽くす俺に、hydeさんはもう一度はにかむように笑った。
いつもより紅みの増した頬にただ照れているだけだと分かって、馬鹿みたいに安心する自分が居た。
よかった、嫌われてへん・・・、そう安堵する俺の前で、いつものように少しゆっくりとしたテンポで話し出すhydeさん。

「yasuもここで収録やったん?」
「あ、はい。hydeさんもですか?」
「うんー。でもほんま偶然やなー」

ずっとはにかむような表情で話をするhydeさんは、数ヶ月前の核心に触れはしなくて。
なんとなく触れてはいけないと、その話題に移ることは無かった。

「HYDE、もう始めるって」

hydeさんが曲がってきた先から声がして男が現れた。
えーと・・・ギターのKAZさん・・やな。
俺はぺこりと小さくお辞儀をして挨拶をする。
同じようにお辞儀をして彼はまた戻っていった。

「・・あ、じゃあまた。」

そう短く返事を残したhydeさんも、その後を追って曲がり角に消えた。

俺はどこかまだ浮ついた気持ちのまま、しばらくhydeさんの消えた先を見つめていた。



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うひゃーーーー!!!すごい久々・・・。
見てくれてる人居るのかな・・・w
久々が微妙な感じでごめんなさい。
やすが気持ち悪・・・・゚∀゚)・∵. ガハッ!! ww
しかもまだ続きます。



2006.09.03
Heavenly Feathers 管理人


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