oneday story 0127 (yasu×hyde)
レコーディングスタジオの一室。
俺は小一時間、携帯と睨めっこを繰り広げていた。
「ああああ、やっぱりあかんかなーーーー!!!」
お手上げだとばかりにテーブルへと突っ伏した。
「なんや、お前まだ送ってなかったんか。」
外から戻ってきたka-yuが、面白半分呆れ半分で携帯を取り上げて笑う。
ka-yuが覗き込んだ携帯の画面には、某相手へのお誘いのメール。
「はようせんと27日なってまうで。」
「分かっとるわ!!」
ニヤリと笑うka-yuの手から携帯を取り返し、悪態を吐き膨れてみせる。
けれど、もう一度携帯を見据えたところでやはり泊まる。
来る27日は己の誕生日。
尊敬し、そして愛して止まない愛しのhydeさんと今年の誕生日こそは一緒に居たい。
そんな仄かな願いを抱きながらメールを送ろうとしている訳だが、今一歩踏み込めないでいた。
それというのも、突然、”逢いたいので逢いましょう”なんて言ったら退かれる事決定やし。
なんといったって、きっとhydeさんは俺の気持ちに気づいていない。
「突然逢いたいとか言ってひかれたら嫌やしなー・・・」
でも別に何も疚しいことがあるわけやないんやし何戸惑ってんねん。
そうや、何も疚しいことなんて・・・・下心なんて・・・・・・・
「・・・・下心・・・無いわけでもないわな・・・・」
そりゃあ長年片想いしてきた訳だから、もし運良くいったら今年こそもっとお近づきになって、そしたらもしかしたらもしかして・・・・
「・・・・て、何考えてんねん。」
相変わらず自問自答しながら虚しくなる。
大きく溜息を吐こうとした時、携帯が着信を告げた。
「誰や・・・・って、えっ、hydeさんやっ」
画面に表示された名前に慌てふためき、思わず携帯を取り落としそうになりながら受話ボタンを押した。
「も、もしもしっ?」
思わず裏返ってしまう声。
あああ、なにやっとんねん俺。
『もしもし?俺やけど、今平気?』
「は、はい!どないしたんですか?」
『いや、たいしたことやないんやけど・・・今度の土曜日暇かなーって思って。』
あああ、hydeさんからのお誘いや!
舞い上がったまま頭の中で思い起こす。
土曜日・・・・土曜日・・・・?土曜日?・・・・・って、俺の誕生日やんかーーーーー!!!?
「ど、土曜日ですかっ!?」
『あ、うん・・・あ、用事ある??』
「い、いいえ!仕事終わったら空いてるんで大丈夫です!!」
食いつくように即座に弁解の返事を返したyasuに、hydeは不思議そうに返事をした後続けた。
『俺も久々オフやねん、せやからウチで飲まへん?』
「えっ、いいんですか!?」
『”えっ”って・・・いいに決まってるやん』
何言うてんの?と疑問そうに聞いてくるhydeさんの声を聞きながら、俺は至福の幸せに浸っていた。
hydeさんと誕生日一緒に過ごせる上に、hydeさんちにお招きなんて・・・、し、幸せすぎやーー!!!
多分、hydeさんは俺の誕生日やって知らへんのやろな。何をそんな?って感じやし。
まあでもそれは俺の自己満足やから、hydeさんと一緒に居れるってだけで結果オーライや。
『yasu?聞いてる??』
独り悦に浸っていた俺にhydeさんが電話の向こうから心配そうに聞き返してきた。
あかんあかん・・・!
「あ、は、はい!!あの、じゃあ俺仕事終わったら行きますね!」
『うん、待ってる。じゃあ土曜日な〜』
「はーいvv」
電話を切って携帯を握り締める。
「・・・・・ふ、ふふふふふふふふ」
思わず零れた笑み。
我ながら気持ち悪いし、多分遠巻きに見てるka-yu達が不審そうな目で見てる。
でも、今の俺にはそんなことお構いなしや。
「っ〜〜〜〜〜!!!やった!!!」
もう一度携帯を握り締めながら感嘆の叫びを上げた。
*
土曜当日。
仕事も颯爽と終えて、足早に向かったhydeさんの家。
嬉しい反面、緊張もする。
hydeさんの所にお邪魔するのは初めてではないけど、それでもやっぱりドキドキする。
男が男の家に行くのにドキドキするのもどうかと思うが・・・ドキドキするものは仕方が無い。
それでもやっぱり浮き足立つ足取り。
飲むって事は泊まっていってもええんかな。
あ、それともタクシー使って帰ったほうがええかな。
図々しい思われたら嫌やし・・・でもきっとhydeさんの事やから”泊まっていき”って言うてくれるよな・・・。
あああ、でもそうしたら俺の理性が保つかどうか・・・・・・・って、俺は何考えてんねん!!!
ふと気がつくと有り得ない事を色々思い巡らせてはドキドキしている自分が情けない。
と、とりあえずは今日hydeさんと居れるだけで目標は達成や。
それで充分や。
あ、でもできればさりげなくhydeさんの誕生日の予定も聞けたら聞いとこう・・・。
そんな事を考えているうちにhydeさんの家へと着いた。
まだドキドキしている胸を落ち着かせるように一つ深呼吸してから呼鈴を押した。
「おー、来たかー?開けるから上がってー」
程なくして聞こえてきたhydeさんの声は上機嫌で、後ろがなんとなく騒がしい。
もしかして・・・、そんなちょっと嫌な予感を抱きながら中へと入りhydeさんの部屋のドアを開けると・・・。
や、やっぱり・・・・!
アニスやらKazさんやら・・・勢ぞろい。
二人きりやないんかーーーーーーー!!!
想い浮かべていたイチャイチャ・・・やなくて、hydeさんとの二人きりという妄想が儚くも崩れていく。
よく考えてみれば誰も二人きりだなんて誰も言ってない。
「yasu?どないした?あがってや」
固まっている俺をhydeさんは不思議そうに見上げた後、笑った。
少し凹みながらも、迎えてくれたhydeさんの笑顔でそんな気持ちなんて吹き飛んだ。
まあhydeさんと居れるんやしええか。
「おじゃましまーす!」
hydeさんが向けてくれた笑み以上に満面の笑みを浮かべて、俺は部屋へと入った。
二人きりではないにしろ、hydeさんが傍で楽しそうに笑ってるだけで幸せを感じてしまう自分は相当だと思う。
でも二人きりやったらもっと幸せだったかなぁー・・・そんな事を考えながら相変わらずhydeさんに見惚れていると、アニスがふと思い出したように切り出した。
「あれ?そういえばyasuって今日誕生日だよね?」
「え?あ、ああー、はい。」
皆の目線が一気に集まってちょっとこそばゆい。
そういえば自分でも忘れとった。
「ほんま?そうなん??」
やっぱりhydeさんは知らなかったようで驚いていた。
でも、皆が口々におめでとうって言うてくれて、hydeさんとも一緒に居れて、もちろんhydeさんもおめでとうって言うてくれて・・・やっぱりこれだけでも幸せやなー。
まあ欲を言えばやっぱりhydeくんと二人きりやったら・・・って考えてもしまうけどな。
*
「yasuー、酒切れるし一緒に買出し行かへん?」
飲みも半ば、皆各々で盛り上がっている中、hydeさんが俺の服の裾を引いた。
もちろん俺が断る理由なんてあるはずも無く、即座に返事を返した。
皆が盛り上がってる中、抜け出すように部屋を出た。
別に疚しいことをしてる訳ではないのに、少しだけ・・・こそばゆい。
そして、この時間だけhydeさんを独占できるのが嬉しかった。
外はやっぱり冬の深夜だけあって凍えるように寒かったけど、隣にhydeさんが居るってだけで笑みが浮かんでしまう。
そんなニヤニヤしているであろう俺の横を歩くhydeさんが少々咎めるように言うてきた。
「なんや、言うてくれたらよかったんに。」
「え?」
なにが?という顔をしている俺に、ちょっと剥れて
「誕生日や、誕生日!!」
「あ、ああ!」
「言うてくれたら何や用意してやれたのに、なんも用意してへんわー。」
「え、良いんですよそんな・・・、俺は誕生日にhydeさんと居れるだけで幸せっすv」
ニッと笑う俺を見て”変な奴”と苦笑いを浮かべるhydeさん。
相変わらずなhydeさんの態度だったけれど、それでも今日は二人きりのこの時間が凄く幸せだった。
「なんか欲しいもんとかあらへんの?」
「えっ、せやから別にいいっすよ〜」
ほんま、hydeさんと一緒に居れるだけで幸せやし。
でも、hydeさんは納得行かないらしく、何か無いかと促す。
「ええから、何でもええから言うてみいや?」
欲しいもの・・・欲しいもの・・・hydeさん・・・ってそんなん言うたら完璧退かれるしなあ。
あっ!
「えーと、じゃあ・・・あの、hydeさんの誕生日、一緒に祝わせて欲しいっす!!」
「え??」
今度はhydeさんが驚いた顔で聞き返してきた。
や、やっぱりアカンよなー・・・。
先約とかも有るやろうし・・・。
「・・・・・・って、駄目っすよねー?先約ありますよね?」
あはは、と笑ってごまかそうとする俺にhydeさんは苦笑いを浮かべて言った。
「いや、俺誕生日は仕事やねん。」
「え?」
「だから別に約束とかは無いねん。寂しいけど、うーん、まあ誕生日が嬉しい年でもないしな。」
約束ないんすか!?
誰に言うでもなく俺は心中で呟いてから、慌てて喰いついた。
「あ、あの、仕事終わった後とかでもええんで逢えませんか!?」
「んー、大丈夫やと思うけど・・・なんで、お前そんなに祝いたいん??」
必死な俺に、”おかしな奴”と笑うhydeさん。
その笑顔が相変わらず可愛くて胸が高鳴った。
「祝いたいんです!!」
即座に返事を返す俺に、未だくくくと笑いながらhydeさんは了承するように頷いた。
「ええよー、じゃあ仕事終わった後なー。」
「はい!!」
嬉しくて、嬉しくて、思わずガッツポーズをする俺に、hydeさんは付け足すように話を続けた。
「でもそれだけじゃ悪いし・・・あ、じゃあ・・・」
そして思い立ったように腕のブレスレットを外したhydeさん。
それを俺の前へと差し出した。
「へ?」
「これ前に見せた時、お前気に入ってたやろ?あげるわ。」
最近良くhydeさんが身に着けていたそのブレスレット。
特注で作って貰ったものらしいが、デザインが結構俺好みなデザインで、確かに前に見せてもらった時に感嘆の意をしつこいぐらい述べた気がする。
「お、覚えててくれたんっすか?」
何よりもまずそれが嬉しくて、思わず聞き返してしまった。
そんなことまで覚えていてくれてたなんて・・・思わず期待してしまう。
「ほんまにええんっすか?」
「本当はちゃんと新品買ってあげるべきなんやけど、間に合わないしな・・・」
苦笑いするhydeさんに、俺はぶんぶんと首を横に振った。
「ぜ、全然良いです!hydeさんの私物貰えるなんて・・・俺嬉しいっす!!」
「私物って・・・お前ほんまに俺のファンなんやなー」
またしても必死な俺にhydeさんは笑う。
ファンですけど・・・でも、ほんまに好きやねんけど・・・。
俺の腕にhydeさんがそのままつけてくれて、思わぬ接近にまたしても胸が高鳴る。
あああ、俺は本当どこぞの中学生かっちゅーねん。
「うん、似合うな!おめでとー」
「あ、有難うございます!大事にします!」
ドキドキする俺などお構いなしに、hydeさんは満足そうに笑った。
「あ、あと一個」
「え?」
ふと立ち止まったhydeさんは、その声に顔をあげた俺の頬に軽くキスをした。
「・・・・・・・へ?」
思わず呆然と固まる俺に、
「誕生日だからトクベツーv」
本気なのか冗談なのか分からない口調でそれだけ言ってふふっと笑ったhydeさんは、また踵を返し先を歩いていった。
「トクベツって・・・・」
後に残された俺は、hydeさんの唇が触れた頬に手を添えながら小さく呟いた。
そんな少しだけの悪戯と甘さを含んだ俺の誕生日。
とにかく幸せでいっぱいだった。
今日のお礼は何にしよう、そんな事を思いながら先を歩くhydeさんの背中を追いかけた。
next go to >> 0129
・・・・・・・・・・・・・・・・◆COMMENT◆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
yasuバ小説です。
すすすすすごい即席感ばっちりですみません。
hyバ小説「oneday story 0129」のほうに続く予定です(^^*
2007.02.02
Heavenly Feathers 管理人