「あー・・・なんか緊張します。」
楽屋へと向かう廊下の途中、俺は数回大きく呼吸を繰返した。
「ははは、大丈夫やって!がっちゃんやって鬼やあるまいし」
そう言って笑うhydeさん。
あぁぁ・・・Gacktさんに逢う緊張の前に、hydeさんが隣に居るという感激でどうにかなりそう・・・。
明らかに俺へと向けられた笑顔に、すでに俺の感情は最高潮。
その後も他愛もない話で終始笑顔なhydeさん。
その笑顔に見とれているうちに楽屋へと辿り着いた。
ああ、今までhydeさんの笑顔で精一杯やったけれど、こうして楽屋を目の前にすると・・・
き、緊張してきた・・・。
そんな俺とは裏腹に、hydeさんは慣れた手つきで軽快にドアをノックする。
「がっちゃーん」
「はぁい」という返事と共にドアが開く。
そして、本日のliveの主役Gacktさんが現われた。
「いらっしゃい、hyde」
そしてhydeさんを引き寄せ、そのままハグ。
「いらっしゃいましたー」
hydeさんも慣れたもので、Gacktさんの背中へ腕を回しポンポンと叩く。
おおお、本当にハグするんやぁ・・・。
そんな光景を見ていた俺は頭のなかでぼんやりとそう思った。
しかし、ええ男同士やと絵になるなぁ・・・
はっ!?もしかして2人ができてるっちゅー噂はホンマもんやってんか!?
いやいや、でもハグはやっぱりGacktさんにとっての挨拶って聞いたし。
うん、そうや、挨拶や挨拶。
けれど、挨拶ならぽんっと終わっても良さそうなものの
2人はなかなか離れない。
というかGacktさんはもうハグというより抱擁という形で、
hydeさんをぎゅーーっとしている。
「来てくれて本当嬉しいよ」
そして、hydeさんの頬に、己の頬を寄せる。
俺の姿はまったく見えて無い様子。
一方hydeさんは俺の視線に気付いたのか、腕から逃れようと足掻き
「が、がっちゃん!ほら、yasuくんも来ててん。」
「ヤス?」
hydeさんの言葉にGacktさんの目線が本日初めて俺へと向けられた。
その隙にGacktさんの腕からするりと抜け出したhydeさん。
俺の手をひき、Gacktさんの前へと立たされる。
「あ・・・お久し振りです。今日はありがとうございます。」
俺は緊張しながらも、そう告げぺこりとお辞儀をした。
ううう・・・緊張というか目線が怖いのは気のせいですか?
「いらっしゃい」
そう一言告げ、また視線はhydeさんへ。
「一緒に来たの?」
「うん、乗せてきてもろてん」
な?、とこちらを向いて笑うhydeさん。
その笑顔に恐縮しきっていた俺の緊張が少しほどけた。
「ふーん・・・」
けれどGacktさんは今度は俺の顔をまじまじと見つめた。
「・・・・・・・」
その目線にたじろぐ俺を見て、
「がっちゃん!!何睨んどんのっ!!」
こら、とhydeさんがGacktさんの耳を引っ張る。
「ぅあ、いたたたた・・・いや、別に睨んでないし!」
「yasuくん気にせんでええで!がっちゃん目つき悪いねん」
そういって、Gacktさんの頬をむにーっと引っ張るhydeさん。
うあぁ・・・あのGacktさんにそんなこと・・・
hydeさんって本当偉大かも・・・
「もぉ、hydeってば痛いじゃない。それに目つき悪くないし・・・」
引っ張られた頬をさすりながらそうぼやく。
けれど実際あんまり怒っている風でもなく、むしろ嬉しそうで。
というか、hydeさんと話すGacktさんは終始笑顔。
「それよりがっちゃん、おめでとう」
そしてhydeさんは何事も無かったかのようにそう切り出した。
そう、今日はGacktさんの誕生日でもある。
俺もhydeさんに続いて
「おめでとうございます。」
「うん、ありがとう。」
俺たち2人にお礼を言った後、”嬉しいよ”とまたhydeさんを抱き寄せた。
もぉ、とhydeさんが苦笑いを浮かべながらすぐに離れたけれど、
俺はなんとなく居づらくて・・・というか居るべきやないと判断し(笑)
「あ・・・じゃぁ、俺向こうの控え室いってますね」
お辞儀をして出ていこうとするところをhydeさんが呼び止めた。
「がっちゃん、もう最終打ち合わせやろ?俺ももう行くわ」
そういって、俺の後に続いて部屋を出ようしたhydeさん、
けれど急に踵をかえし、また部屋の中へ。
そしてまたすぐに出てきた。
「どうしたんですか?」
不思議に思った俺が関係者控え室へと向かう途中聞けば
「”がんばって”と”プレゼント”を渡してきただけ〜」
そういって、にっこり笑うhydeさん。
少し紅く染まった頬に思わずどきり。
ううう・・・hydeさんそんな顔しちゃ駄目ですよー・・・。
るんるん気分で歩くhydeさんの隣で、心中で溜息をついた。
live後の打ち上げ会場。
俺はあの2人をじーっと見つめていた。
live中、Gacktさんは俺たちのことを紹介した。
hydeさんはちょっと恥ずかしそうにしていたけれど、
『もぉ〜、辞めてって言うたのに〜』という言葉とは裏腹に少し嬉しそうにしていた。
嗚呼・・・やっぱり、この2人はもう?
俺のhydeさんへの想いは片思いのまま告げる事無く玉砕っちゅうこと?
相手がGacktさんじゃ、敵うわけ無いしなぁ。
まぁ、でもこうやってhydeさんと同じ場に居れるだけでも幸せ者か。
そう自分を元気付けた俺は、はぁと溜息を一つ。
グラスの中のウーロン茶を転がした。
「yasuくん?」
「え?あ、は、hydeさん!」
hydeさんは俺が座っていた席のすぐ隣の椅子をひき、そこに腰を下ろした。
「あれ?ウーロン茶・・・あ、そっか・・・」
俺の手にしたグラスの中身を見て疑問を浮かべたhydeさん。
そして理由に気付いたらしく、あぁ、と小さく零した。
「飲んでもええよー?俺運転してったるし。」
そんな優しいことを言ってくれた。
ああ、hydeさん俺なんかにそんな気つかってくれるなんて・・・。
俺ちょっと感動で泣きそう・・・。
「えっ、そんな良いですよ!平気ですから!」
でも、そんなhydeさんに負担かけるわけには行かへん。
それに俺はhydeさんを送る為なら別に一日や二日断酒したってかまへん。
俺は慌ててそう断った。
「せやって俺んとこの打ち上げでも俺のこと送ってくれたやん?
打ち上げやのに飲まれへんとつまらんやろ〜?」
そういって、hydeさんは俺の為にアルコールを用意してくれた。
「いや、でも本当大丈夫ですって!!」
そう俺が断っていると、後ろから声がかかった。
「そうだよ、飲まないって言ってるんだから良いじゃない」
後ろを振り返れば、ワインの入ったグラスを持ったGacktさん。
「がっちゃん〜・・・せやってぇ・・・」
未だ俺のほうを気にしてくれるhydeさん。
その表情を見ていたら、なんだか断っているのが申し訳なくも思えてきた・・・。
そんな様子を見て見ていたGacktさんは、俺を一別してhydeさんのほうへと回り、
先ほどhydeさんが持ってきたグラスを持ち、hydeさんの前へと差し出した。
「だから、これはhydeが飲みなよ。・・・ね?」
そういって、俺に同意を求めた。
急に振られてびっくりしながらも、俺は”はい”と承諾。
「うーん・・・」
未だ納得の行かないhydeさんは、グラスと俺を交互に見る。
困った顔すらすごく可愛く見えて、俺はもうそれどころでは無かった。
未だ渋っているhydeさんに向かって、Gacktさんが、
「hyde〜きょぉは僕の誕生日でしょ?
僕はhydeにも飲んで欲しいの・・・ね、お願い聞いてくれるでしょ?」
そうhydeさんの耳元で囁く。
そのGacktさんの行動に、hydeさんはびくりと身体をふるわせて、頬を染めた。
ああぁぁあ・・・Gacktさぁーーーーん!?
「辞めぇって・・がっちゃん酔ってるやろっ!!」
頬を寄せてくるGacktさんの顔を押しのけながら、hydeさんが唸る。
一方Gacktさんは”酔ってないよ〜”と良いながら、執拗にhydeさんに迫る。
「がっちゃんー!!やーめーてーやー!!」
hydeさんは本気でGacktさんを怒る。
「じゃぁ、飲んで?」
そういって、グラスをまたhydeさんに押しつける。
またも、グラスと俺を交互に見たhydeさんは、
「分かった飲むって・・・ヤスくんごめんなぁ・・・」
そう苦笑いを浮かべた。
*
打ち上げも終盤になり、もうお開きにしようかとの声が挙がり始めた。
そんな中、俺は部屋の隅の一角にhydeさんの姿を見つけた。
お酒の所為か、すーすーと寝息を立てて、眠るhydeさん。
そろそろお開きにするから起こしたほうが良いんじゃない?、
とスタッフに起こすよう命じられた俺は、hydeさんの元へ・・・。
hydeさんは毛布にくるまるようにして眠っていた。
(やっぱり、Gacktさんが掛けてあげたのかな・・・)
俺は、Gacktさんがスタッフに毛布を手配するように言っていたのを思い出した。
きっと眠っちゃったhydeさんの為にこのこの場所を空かして、
このソファーまで運んであげたんだろうなぁ・・・。
関係者と挨拶をしているGacktさんをちらと見た。
そしてまたhydeさんへと視線を戻す。
それにしても・・・気持ちよさそうに寝てるなぁ・・・。
近くに行ってその顔をのぞき込む。
気持ちよさそうに眠る表情はまるで天使のようで、俺は場を忘れ見とれてしまった。
睫長いなぁ・・・。
まじまじとのぞき込んでいると、hydeさんが身じろいだ。
そうや、起こすんやった。
凄く気持ちよさそうに寝てるところ申し訳ない気もしたけれど・・・。
「hydeさん・・・hydeさーん・・・」
俺はhydeさんの肩を揺すりながら声をかけた。
なかなか起きないhydeさん。
何度か呼びかけているうちに、hydeさんの瞼が動いた。
「んー・・・もぉ朝ぁ〜?・・・」
まだ夢の世界のようで、舌足らずな口調でそんなことを言うhydeさん。
かわいいなぁ・・・思わずそう想ってしまったのも束の間、
hydeさんが、俺の首へと手を回してきた。
いまだ目はとろんとしていて、視界はまったく見えてないご様子。
「がっちゃん・・・おはよぉー・・・」
そして次の瞬間。
俺の唇は、hydeさんの唇と重なった。
いや、ソレがhydeさんの唇だと分かったのは少しの間の後。
俺は何が起こったのか分からず、ただ呆然と固まった。
近すぎるhydeさんの顔がぼやけて映る。
唇を割って滑り込んできた舌が、やけに熱く感じた。
いったいどうなって・・・
酔いしれる意識の中でそう考えた時、俺の身体はぐいと離された。
「・・・・ごめっ・・・///」
呆然としたまま目線を少し下へと向ければ、そこには顔を真っ赤に染めたhydeさん。
「あのっ・・間違えててん・・・・ほ、ほんまごめんっ・・・///」
そう言ってhydeさんは毛布を掴んだまま恥ずかしそうに顔を埋めた。
「あ・・・え・・・はい・・・」
俺は言葉にならない言葉を発しながら返事をした。
その返事の意味も良く分からない。
「あの、もうみんな上がるみたいなんで・・・帰ります?」
なんとか、そう切り出せばhydeさんはこくりと頷いた。
そしてそのあと
「あの・・・このことがっちゃんには言わんといて・・・?」
・・・・・・・。
い、言えるわけあらへん!
だって、『がっちゃん、おはよぉ』で『ちゅー(しかもベロちゅー)』てことは
明らかに”そういう関係”っちゅーことやろっう!!?
口が裂けてもGacktさんには言われひん・・・。
バレたらどうなるか・・・
おれは必死でこくこくと頷いた。
それにほっとしたのか、hydeさんは頬を染めたままはにかんで、
「2人だけの秘密なv」
その笑顔に俺はもう卒倒寸前。
*
「hydeさんどーぞ」
気を取り直し、駐車場へと着いた俺達。
助手席のドアを開けて、男らしくエスコート。
けれどそこで後ろから声がかかった。
「僕も送ってよ」
乗り込もうとしたhydeさんの体に腕を回す人物。
「がっちゃん!」
「Gacktさん!」
そんなGacktさんは相変わらずの調子でhydeさんの肩を抱きながら、
「僕も送って?」
「あ・・え?」
俺、Gacktさんち知らへんのやけど・・・
突然のことで戸惑う俺を見たhydeさんが、助け舟を出してくれる。
「が、がっちゃんは専属おるやん!」
「いいじゃない?僕も送ってよ。ね?」
けれどGacktさんはまったく聞いてない様子で、俺に詰め寄る。
もちろんhydeさんの肩を抱いたまま。
あああ・・・ちょっと怖い・・・。
「は、はい〜」
俺は勢いのまま返事を返した。
「がっちゃん!!」
呼び止めるhydeさんの声も聞かず、開いていた助手席のドアを閉め。
後部席へと乗り込んだ。
そして、この時も、もちろんhydeさんの肩を抱いたまま。
*
「えっと・・・どちらの家先向かいます。」
しばらく運転してから、そう聞いた俺に
「hydeの家に決まってるでしょ?」
ああ・・・ソレは、”hydeと二人きりになんてさせるわけないでしょ?”ということですか?
顔は笑顔ながらも明らかに反抗的な目線を向けてくるGacktさん。
そんな感情を背中にひしひしと受けながら俺は”ハイ”と返事を返した。
「何言うてんの!がっちゃんちのが先に通るやろ!!」
相変わらず必死にフォローを入れてくれるhydeさん。
「ヤスくん、道成りでええよ?」
後部座席から顔を出して、そう告げてくれたhydeさん。
バックミラーから覗いたその笑顔に、思わず涙が出そう・・・。
「あー、」
そんな中、Gacktさんがさらっと言った。
「やっぱり僕の家で良いよ。hydeは今日うちに泊るから。ね?」
そしてhydeさんのほうへと笑顔を向ける。
「は?」
急に自分に向けられた言葉に、hydeさんはびっくりしたようにGacktさんを見た。
「うん、決定!それでよろしく。」
「えっ、ちょっ・・・!!」
何か良いたそうなhydeさんを笑顔で押さえつけて、
「hydeだって、”ヤスくん”を早く休ませてあげたいでしょ?」
そう言ったGacktさん。
本心はきっとhydeさんと一緒に居たいんだろうけれど。(苦笑)
「う・・・・」
俺を掛け合いに出されて、言葉を詰まらしたhydeさん。
それでGacktさんの提案が通った。
そして、Gacktさんの家へと到着。
別れるのが名残惜しくて、俺は車から降りてお見送り。
「どうもありがとうね。」
「本当ありがとな〜。」
口々に二人はお礼を言ってくれた。
俺のほうからも頭をさげて挨拶。
「じゃあ、hyde行こうか?」
そう言って部屋へと歩いていくGacktさん。
少ししんみりした気持ちで二人の背中を見送っていると、
hydeさんだけちょっとこっちを向いて・・・
「ヤスくん・・・あの、がっちゃんのこと嫌わんといてな?」
「え・・・?」
本日のGacktさんの俺への態度を気にしてか、hydeさんは別れ際にそんなことを言ってきた。
「がっちゃんは、好きでも無い人をliveや打ち上げにまで招待するようないい加減な奴ちゃうよ?
なんかちょっと今日は様子おかしかったけど・・・いつもああじゃないねん・・・せやから・・・」
そう言ってhydeさんはちょっと俯いてしまった。
本当にGacktさんのことが心配で心配で仕方ないらしい。
「はい、分かってます・・大丈夫ですよ!!」
俺がそう笑って言えば、hydeさんはホッとしたように表情を変えて、
「そっか・・・良かった!!」
そうにっこり笑った。
なんだか俺の失恋決定な場面ではあったけれど、hydeさんのその表情が嬉しくて
俺は更に笑顔を浮かべた。
「hydeー、何やってるの?早くおいでよー」
そうGacktさんが玄関のほうから呼びかけた。
その呼びかけに応えてからhydeさんはまた俺のほうへ向き直り
「今日はありがとう。次はちゃんと飲もうな、俺おごるから」
そうして俺の肩をぐいと引き、そのまま頬へとちゅっと口付けをした。
「・・・・・・・っ!!?」
固まる俺へと笑いかけ
「またなv」
そういって、迎えに来たGacktさんのほうへと小走りに向かっていった。
俺はhydeさんとGacktさんが部屋へと入るまで呆然とその場に立ちつくしていた。
未だ柔らかく暖かい感触の残る左頬へと手を添えながら・・・。
今日は色々あって、そしてやっぱりGacktさんとhydeさんはラブラブなんだということを
身をもって知らされて・・・少なからず切なくはなったけれど・・・
でも、hydeさんと一緒に居る時のGacktさんはもちろん、
Gacktさんと一緒に居るときのhydeさんも、Gacktさんに負けないぐらい凄く嬉しそうで。
やっぱりhydeさんのその幸せな表情をみたら、俺にはもう何も言えない。
それぐらいhydeさんの笑顔が、俺にとっては凄く大きな存在だったんや・・・。
そんなことを想いながら、一つ大人になれた俺の夜は更けていった。
end.
◆COMMENT◆
久々更新、ヤスハイです(^^
ちょっと、ネタが古いですが・・・
ガクliveでの、ヤス君ハイドさんお隣同士でlive観戦事件(笑)から
ずーっと書きたいと思っていて、途中までできてた作品です。
今回ヤスハイ熱上がったままに書き上げました。
なんだかやっぱりヤス君片思いですが(笑)
でもヤス→ハイの片思いは、どろどろしなくて書いてて楽しいです。
(ヤス君ごめんね)
ヤスハイは前から大好きで、だいぶ前に書いたものも有るので。
機会あれば載せて行きたいなぁー・・と思ってます。
なので、
ヤスハイ読みたいなぁ・・と思ったら是非管理人まで!(^^
感想もお待ちしております。
次回のヤスハイはヤス君をなんとか報われるようにしてあげたいですなv
でわー。
2004.11.14
Heavenly Feathers 管理人
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