約束 (yasu×hyde)



時は年も末。
巷は新しい年を迎える為に華やいではいるが、相変わらず忙しい毎日。
というよりも、今日が一番の山場とでも言うのだろうか。
自分も周りもいつも以上にぴりぴりとしていた。

「hyde、はようしてくれへんとほんまに――・・・」
「分かってる!!」

なかなか仕上がらない歌詞とか歌入れとか、その後にもチェック事項や何やらが待っているというのに、仕事の予定は詰まるばかりでなかなかスムーズに流れてくれない。
なかば苛々しながらも、結局はどうにかしてこなしていくしかない。

そんな忙しさの極みの中、傍らに置いていた携帯が鳴る。
出る気にもなれなくてしばらく放置するものの、一行に切れる気配がない。

「・・・っ、ぁあーー!!もうっ!!」

徐に携帯を取り上げ不機嫌極まりない声で電話に応じる。

「もしもし?」
『もしもし、hydeさん?俺です。』

相手はどうやらyasuらしい。

「なんやねん」

手短に用事を済まそうと用件を聞きに入る。
すると、相手は逆に不思議そうに聞き返してきた。

「いや、なんやねんって・・・今日約束してはったでしょう?俺待ってるんですけど・・・」

言われて以前交わしたであろう約束を思いだす。
なんとなくうっすらと覚えているような覚えていないような。
話の合間にさらりと交わしたような約束で、忙しい毎日を送る中で忘れてしまっていた。

だが、ちらりと時計を見たがどう考えても今日中に終わりそうもない。

「ごめん、今日無し。」
『えっ、無しって・・・』
「忙しいから、切るで。」

相手の返事も待たずに電話を切った。
すると、間髪置かずにまた携帯は鳴り出す。

「なんやねん!!」

思わず怒鳴ってしまった事に、その時は大して気にも止めなかった。

『どういうことですか?俺待ってたのに急に無しってそんなん言われても』
「だから忙しいって言うてるやろ!仕方がないやろ、ほんま忙しいねん。」
『だったら先に連絡ぐらい・・・』

相手の言い分ももっともなはずなのだが、なかなか思い通りに進まない作業に苛々も募っていたせいもあり、いつもよりも反発してくる相手に更に苛々して思わずまた怒鳴ってしまった。

「だから、忘れてたの!!」
『なっ・・・そんなん酷いやないですか!』
「だから忘れてたことも今日アカンことも謝ってるやろ!!」
『そういうことやなくて――』
「ああ、もう、駄々こねんなや!ほんま忙しいから切るで!

またしても相手の返事を待たず強制的に電話を終えた。
そのまま携帯の電源を落として仕事へと没頭する。

結局今日のノルマを終えて帰れたのは朝日が昇った頃だった。
仕事部屋のマンションへと戻りシャワーを浴び、其の後は倒れるようにベッドへと沈み眠ってしまった。

翌日目が冷め、テーブルの上へと放り出したままだった携帯を手に取る。
そういえばyasuからの電話の後電源を切り放置したままだった。
今、冷静になって考えてみればいくら忙しかったと言えど凄い失礼な態度をとってしまったと今更思った。

きっとyasuの事だからメールなりなんなりで連絡が来るだろう。
そうしたら謝ろう、とかそんなことを考えて携帯の電源を入れた。
だが、溜まったメール数件へと目を通すがyasuからのメールは無い。

「・・・怒ったかな・・・」

流石にアレは自分でも行き過ぎたという自覚があるから、少しだけ心配になりyasuへと電話をかける。
だが、受話器の向こうから流れてくるのは無情にもアナウンスだけで。
どうしよう・・・とそんなことを思いながらも、仕事へと出かけなければならない時間になり、少しだけ残る不安をそのままに家を出た。


*


数日前の山場を越え半ば落ち着いた仕事は、いつもの雰囲気を取り戻していた。
そんな仕事の合間に相変わらず連絡の無い携帯を見つめる。
あれから数日が経つが、結局yasuからの連絡はなかった。
こんなこと初めてで、なんとなくバランスが崩れたとでもいうのだろうか・・・タイミングが取れなくて何も連絡できないまま今日を迎えていた。

「よ、お疲れー、今日はもう上がってええって。」
「え?」
「約束もあるだろうしなー、良いお年を〜」

からかうようにそう告げて去っていくメンバー。
こんな状態では洒落にすらならない。

年が明ける今日。
この日は一緒に迎えようと大分前から約束をしていた。
お互い忙しい合間を縫っての約束だが、これは大分前からしつこいぐらいにyasuが言って居た事なので覚えている。

(今日・・・逢えんのかな・・・)

一向に連絡の無い携帯を見つめたまま、またひとつ溜息をつきジャケットのポケットへとしまいこんだ。


*

仕事部屋へ帰っても何をするでもなく、ただソファーへと腰を下ろしぼうっと時を過ごしていた。

約束をした時、確かあっちも今日は仕事だっと言っていたはず。
それでも逢いたいと言っていたyasuは仕事が終わってからすぐ駆けつけてくれると言っていた。
いつもならば絶対に来ると言えるのに、今こうして不安なのは先の喧嘩まがいの事があるから。

約束を忘れていたのもこちらで一方的に苛々した気持ちを押し付けて・・・相手に非なんてひとつもない。
連絡が来ないのが怒ってるからだとしても、それも当然の事。
あんな喧嘩した後でのこんな約束覚えていないかもしれない。

「忘れてもうたかな・・・」

あんなふうに別れた後だし、連絡も来ないし。
そろそろ本当に潮時なのかもしれない。
いつだって反論することなく自分についてきてくれていたyasu。
そんな優しさに甘えていた自分への罰かもしれない。

来るかどうかも分からないのに、居た堪れなくて玄関の前へと出て腰を下ろした。
時はもう夜も深くなる頃で、当然気温は肌を刺すような寒さ。
それでもそのまま動けなかったのは、待つというよりなかば願掛けみたいなものだったのかもしれない。

どれだけの時間そうしていたのか、ちらりと時間を確認すればもうじき新しい年が来る。
本来ならばめでたい年の変わり目。
世間ではきっと沢山の光や笑いに溢れてる。
ふさぎこんだ気分でいるのなんて、自分ぐらいかもしれない。

「自業自得やな」

それでも結局そこから動けなくて、来るかどうかも分からない相手を待ち続けた。
待つのがこんなにもつらいなんて思ってもみなかった。
いつだって自分から望まなくても相手から与えてくれたから。
その大切さに初めて気づいた気がした。

それにくらべ、いつだって自分は曖昧な態度ばかりで。
確信がない俺の態度にあいつもしんどかったのかな、なんて思ってみると罪悪感も込み上げてきた。
そんな耳に入ってきた、どこからか聞こえる除夜の鐘。
もう年は変わってしまっただろう。

2人で幸せに迎えるはずだった新年は、無情にも虚しい気持ちのままにやってきた。

「あー・・・何やってんやろ」

そんな虚しさや罪悪感と共に目頭に自然と込み上げてくる熱いもの。
誰に観られているわけでもないのに、膝の上で組んだ腕に隠すように顔を埋めた。


「は、hydeさん?」

途端、突然にかけられた声。

「・・・え?」

一瞬耳を疑ったが、でもそれは確かに待ち望んで居た相手の声。
諦めかけていたからか、思わず出たのは驚きの色を含んだ声だった。
呆然としてる俺に、相手は忙しなくかけよってくる。

「こ、こんなとこで何やってるんっすか?風邪ひくやないですか!?」

走ってきたのか息をきらしながら心配をしてくれる様が、たった数日逢わないだけでもとても懐かしく感じた。
慌てて俺を立たせようとするyasuに徐に抱きついた。


「えっ・・・!」
「遅い」
「す、すみません」
「なんで連絡くれへんねん」
「仕事立て込んでて・・・それにhydeさんやって忙しいやろし、怒ってる思うて・・・」
「メールぐらいしいや。」
「は、はい・・・すんません・・・」

突然抱きつかれたyasuは案の定慌てながら返事を返す。
そして、少し遠慮がちに抱きしめ返してくるぬくもり。
それがとても暖かくて、懐かしくて・・・安心している自分が居た。
だから、もう一度、確かめるようにぎゅっと力を込めて抱きついて、小さく呟いた。

「・・・・ごめん」

淋しくて、悲しくて、苦しかったから・・・。

「ごめん、」

小さく零した俺の言葉に答えるように、yasuはただ黙ってぎゅっと抱きしめ返してくれた。
遠慮がちだけど、いつだって精一杯な優しさが嬉しかった。
そんなyasuらしい優しさに触れて我慢していたものが溢れ出す。

「あんな別れ方したから・・・怒って忘れちゃったかと思うてた・・・。」

肩越しに顔を埋めたまま告げた声は思ったよりも弱々しくて少し恥ずかしかったけど、でもまだ離れたくなくて。
格好悪いと思いながらも抱きついたまま、顔を埋めたまま。
そんな俺の頭を撫でるように手を添えて梳いたyasuは心外だというふうに答えた。

「俺がhydeさんとの約束忘れるわけないっすよ。それに、俺が何年hydeさん追いかけてきたと思ってるんっすか?
それを思えば喧嘩できることさえ幸せっすよ。」

けれどその後、「でも、」と付け足して、

「hydeさんが泣くのは嫌なんで、喧嘩はあんまりせんようにしましょうね。」

埋めたままだった顔をそっと上げさせられて、その瞳に映ったのはいつもの笑顔。
それが何時も以上に格好良く見えて、途端顔が熱くなる。

「べ、べつに泣いてへんっ」

そう言うものの、思わず隠すようにまた顔を埋めるから説得力がない。
そんな俺にyasuが小さく笑うのが空気を通して伝わってくる。
いつもとは正反対なやりとりの位置に少しだけ釈然としないものもあったけど、それでも今はただ幸せで一杯だった。

「ほんまは年変わる前にって急いで来たんやけど、間に合わへんでごめんなさい。」

心底申し訳なさそうにyasuに、ふるふると首を振って否定した。
それにyasuは安心したように笑ってから、

「来年は、ちゃんと2人で迎えましょうね。」

そんな笑顔に見とれてる隙に、ちゅっと軽い口付けが振ってきた。
いつもと逆にペースを取られてる気がしたけれど今日ぐらいそれでもいいかもしれない。

催促するように”もう一度”と口付けを強請って、抱きしめてくれる腕に思い切り甘えることにした。

きっとこれから待ってる未来も一緒に居たら幸せになれるから。
次もその次も、そのまた先も・・・きっとまた笑って迎えられるように。



 end.


・・・・・・・・・・・・・・・・◆COMMENT◆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

即席感まるだしでこんにちは(笑)
もう本当こんな日にちにすみません・・・orz

A HAPPY NEW YEAR !
こんにちは、管理人です。
皆様あけましておめでとうございます!
昨年はたいへんお世話になりました。
今年も何卒、よろしくおねがいいたいます!

ということで、新年小説です。

・・・新年早々やっちまった・・・orz

どうしよう、hydeさんをyasuの笑顔に見惚れさせちゃったよ・・・orz(マテw
ちょっと後半のyasuは格好良さを意識して(さほどしてないがw)書いてみたっていうかあげたんですがw
もっと格好良くなるはずだったんですが即席故、あまりつっこんで書いてあげられず残念(笑)
それでもなんかすごいキモi゚∀゚)・∵. ガハッ!!
時間があれば書き足してあげる予定ですw
ええと、少しでもお気に召して頂ければ嬉しいです。

・・・はい・・・もうほんとうごめんなさいorz(土下座

そんなこんなで更新も亀さんな、駄目駄目管理人とサイトではありますが、
今年も宜しくお願いいたします!



2007.01.07
Heavenly Feathers 管理人


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