今日は地方でのライヴ撮影。
収録も終えて、我ながら上手くいったなんて思える撮影だったから。
いつもは歌詞を間違えたりで煩いtetsuに、今日は思う存分褒めてもらおうと勝手に決め込んだ。
けれど、そのtetsu自身の姿が見つからない。
「てっちゃんは?」
手短に傍に居たkenに聞くと
「あ、tetsuは今日雑誌の撮影や言うて先においとましたで。」
折角褒めてもらおうと思っていたのに、当の本人が居ないのでは話にならない。
少々憮然としない気持ちのまま、楽屋を出ようとしたところを呼び止められた。
「hyde、これから飲み行くけど来るやろ?」
「あー、うん。」
適当に返事をして、結局飲みに繰り出すことになった。
帰るのは明日だから、それまで今回は二人でゆっくりできるかなと考えていたのに。
出だしから段取りの不調具合に思わず気分も塞ぎこむ。
さっぱり酒も進まなくて、適当な理由をつけて途中で退散した。
向かうのは自分の部屋ではなくtetsuの部屋。
予め用意してもらっていた合鍵を使い部屋へと入る。
大きな窓から見えるのは、いつにも増して輝く満月。
月明かりに照らされた部屋はがらんとしていて帰った様子は無い。
「まだ終わらんのかな・・・」
何をするでもなく室内をぶらぶらと散策して、ベッドの前へとたどり着く。
きっちりと整えられたままの真っ白なシーツの上に腰を下ろして、そのままごろんと横になる。
誰も居ない部屋はどこか心もとなくて、その気持ちをかき消すように小さく歌を口ずさむ。
メロディと共に想いを伝える術である大切な声。
てっちゃんが好きだと言ってくれた声。
月明かりだけに照らされた蒼白の世界にその声だけが響き渡る。
「今日の歌、てっちゃん褒めてくれるかな」
メロディを辿りながら、思案した。
縋るようにシーツを抱きしめて体を丸め、すうっと大きく息を吸い込む。
香るのはいつもの柔らかなそれではなくて無機質な香り。
「てっちゃん・・・」
まだ冷たいシーツの温度を感じながら瞳を閉じた。
*
「・・・イド・・・・ハイド・・・hyde!」
肩を揺すりながら呼ぶ声に目を覚ました。どうやらそのまま少し寝てしまったらしい。
未だはっきりしない視界を凝らすと、少し心配そうにこちらを見るtetsuを月明かりが照らしていた。
「・・・てっちゃん?」
ベッドから起き上がり見上げるように聞き返すとtetsuの手がそっと頬に触れた。
「涙・・・」
言われて目元に手をやると何故かはらりと零れた涙。
どうやら眠りながら泣いていたらしい。シーツが少し湿っていた。
「あれ、な、なんやろ恥ずかし・・・」
いくら無意識とはいえ眠りながら泣いてしまったなんて・・・
照れ隠しのように慌てて目元を擦るとその手をtetsuが止めた。
「擦ったらあかんやろ」
そしてそっと指で拭ってくれる。
そのまま頬を包むように撫でてくれるtetsuに"おかえり"と告げると、
"ただいま"と小さく接吻をして抱きしめられる。
「hydeの部屋行ったらおらんからびっくりした。待っててくれたん?」
「あー・・・うん。寝てもうたけど・・・」
「そっか、ありがとう」
愛しげな表情のまま髪を梳くように撫でてくれるtetsuにそっと体を預ける。
いつものほんわりとしたtetsuの香りが漂って、酷く安心している自分に気づく。
その香りが心地よくてもっと感じたくて強く抱きしめ返した。
「寂しかった?」
「・・・ちょっと」
俯いたまま素直に小さく答えると、ごめんな、と額に接吻がふってきた。
頬やら口元やら至る所に接吻をふらすtetsuにくすぐったいと身を捩りながら、ふと思い出す。
「なあ、今日の歌どないやった」
「頑張たやん。上出来や。」
くしゃりと頭を撫でて褒めてくれるtetsu。
その首に腕を回して少し上目遣いにおねだりをする。
「じゃあ、ご褒美ちょうだい」
一瞬瞳を瞬かせたtetsuだったが、はいはいと小さく笑って唇へと接吻る。
淡いtetsuの香りと共にふってくるそれはとても心地が良い。
鼻がかった声が漏れたのを合図に一度唇が離れた。
目の前の瞳を見つめながら、触れ合う寸前の至近距離で囁くように言葉を紡ぐ。
「もっと、頂戴・・・」
全てを包んでくれる貴方の香りと接吻を。
end.
◆COMMENT◆
何やかんや言って、1ヶ月ぶりの小説の更新。
テツハイです。
始めはもっと切ない感じの違った仕上がりにになるはずだったのですが・・・
何やらもう誘い受けみたいになってますね(^^;
そして最後のほうがあまりにも簡略的すぎて盛り上がりに欠ける気がしますが。(汗
なんか・・・もっとこう大人っぽい文章をかけるようになりたいものですな。
日々精進ですか、やっぱり。・・・はい、頑張ります。
えー、こんな作品ですが感想なんぞ頂けると嬉しいです。
2005.03.29
Heavenly Feathers 管理人
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