distortion ・・・テッちゃんは 毎晩のように俺を抱く そこには俺の合意なんてものは存在しない 無理矢理、と言っても過言ではない程乱暴で 俺の涙を見ても 顔色一つ変えずに俺を貫く まるで 俺を壊したいみたいに けれど テッちゃんなりの愛し方って言うのを 俺は知ってるから 抵抗はするけれど 逃げはしない 狂気に満ちた愛し方 狂うほど一途に俺を愛してくれてるんやから それでもええなと思ってる この身体には ほら 誰よりも強い 愛の証が残ってる 歪んだ愛の証が * 「・・・・・ぁ・・・っ」 また一つ胸に 俺がテッちゃんのモノである証がつけられる 今日もベッドに投げ込まれて いつもの繰り返しって訳やな 「逃がさへん・・・・・・絶対に」 テッちゃんの長い指が 俺の頬を撫でた 腕、拘束されてんのやから逃げられる筈も無いのに。 ・・・俺がテッちゃんの前から、居なくなる筈も無いのに。 ――こんな事に、何の意味があるんやろ? 「淫乱やなぁ、ハイちゃんは」 そんな身体にしたんは誰やねん、と内心ツッコむ。 キッと睨むように見上げた目に何かを感じたのか、テッちゃんが満足そうに笑う。 反抗するとテッちゃんはそそられる、ってのを俺は知ってる。 ・・・テッちゃんが本当に優しいのも、痛いくらい判ってる。 「・・・そんなハイドが 俺は大好きやねんけどな」 そう言って、軽く唇が触れた。耳朶を甘噛みされて、背筋がぞくりとする。 この感覚、嫌じゃない。 「声、出して・・・・」 絶対出したらへん。 だって何か意味無い気がするし。 いくらテッちゃんの愛情表現だって言っても、 毎日コレは酷すぎるんとちゃうの? そう、でも判ってる ここで従わないと行為は一層エスカレートするのみ 何で俺、こんなにムキになってんのやろ? 従わないが為に 毎日体が裂けるような痛い思いをするのに いや・・・・・・従っても同じか 結局この人には跪くしかないんやね いつからか ‘意味’を探すようになった ――‘意味を探す意味’すら無いのにね 何やろな そこにあるのは、愛情でも何でもない。 『独占欲』やな、ただの。 歪んだ愛し方、歪んだ独占欲。 歪んだ・・・・・・愛情? 何もかもが屈折した世界で 俺とテッちゃんは二人きり 見た目は普通の世界でも ひずんだ空間の中で ・・・・テッちゃんは、出口を見つけられずに居るのかも知れない * 「・・・・・・・・ゴメン」 情事後、テッちゃんは 人が変わったように いつもの優しいテッちゃんに戻る。 で、謝る。 だから俺は、あえて最中には何も言わない。 余計な物は取っ払って、早くいつものテッちゃんに戻って欲しいから。 それが、いつもの俺たちに戻る最短のルート。 そう、一度狂う事で 何もかもが元に戻るなら それで俺が、貴方を癒せるのなら いつかの 朦朧とした意識と 快感の渦の中でのテッちゃんの言葉 ‘何でこんな事 すると思う?’ ・・・判んないよ テッちゃんの考えてる事、何にも見えない 「嫉妬って言うんかなぁ、こんな気持ち」 いつもと同じ行為の後 普段だったら口も聞かないのに 初めてテッちゃんが口を開いた ぽつりぽつりと言うテッちゃんは、ベッドの上で俺をしっかり抱き締めてくれてる。 これが好きだから、狂ったように俺を抱くテッちゃんも責められなくなる 「ああでもしないと、ハイドがどっか他のヤツのトコに行ってまう気がすんねん」 心成しか、テッちゃんの腕に力が入る。そして、もう一度「ゴメン」と呟く。 こんな時、ああ、テッちゃん、不安なんやなぁって思う。 傍に居てあげたいなぁ、って思うんやで? 「・・・・ハイドが俺だけのものである 確信が欲しかった」 誰よりも器用に見えるのに 遠回しな愛し方しか知らないこの人は 何で こんな俺を愛してくれたんやろ? 「歪んでるやろ?」 そう言って、テッちゃんが苦笑した。 でも その顔が今にも泣きそうだって事 俺に判らないとでも思った? 「――縛ればええわ」 「え?」 誰の元へも行けんように 足枷を付けて 他の誰にも触れられんように 両腕をきつくきつく縛り上げて 椅子にでもベッドにでも テッちゃん本人にでも縛り付けたらええねん 他の誰も見れんように いっそこの目も潰してまおか? ・・・はは、そしたらテッちゃんも見えへんな 「何て事言うんよ」 テッちゃんが ほんまにぎゅっと俺を抱き締める ・・・・・何でや?結構な正論やと思うんやけど。 他の誰の名前も呼べんように この口はテッちゃんの唇で塞いでおいて そしてここから離れないように ずっとずっと抱き締めてて ・・・言いたい事は全部言った それで俺はテッちゃんに確信を植え付けただけ 俺には テッちゃんは俺から絶対に離れられない って 確信があるから テッちゃんも同じ想いで居られるように 「・・・・・・・・ハイドぉ・・・・・・」 もう身体が折れんやないかって位 テッちゃんがぎゅうっと俺を抱き締める テッちゃんがこうしててくれるだけで 俺、凄い安心できるんやで? だから テッちゃんが落ち着くまで 今夜は俺が抱いててあげる そっと背中に腕を回して 今一番あげるべき言葉 『大好き』 それでもまだ 俺がどこかへ行くなんて言いたい? 俺は、テッちゃんのもんや 「・・・・・・・負けたわ」 テッちゃんが苦笑して、一言そう呟いた ・・・何やねんそれ? 思わずテッちゃんの腕の中でふき出す せやなぁ、愛されてる自信の大きさは多分俺の勝ちやな けれど そう考えると、テッちゃんをここまで不安にさせたのは・・・・・・・・俺? テッちゃんは、いつでもいっぱい‘好き’をくれるのに。 ・・・・・・あかん、何や罪悪感。 テッちゃんを愛してる証拠、ってのを提示したいのに。 それが出来なくて、いつもテッちゃんを困らせてたんは、俺か? ・・・・・本当に不器用なのは、俺の方 テッちゃんよりもずっと不器用で テッちゃんよりもずっと遠回しで 考えた末 するりとテッちゃんの腕の間を抜けて いつもテッちゃんがするみたいに 首筋に唇を這わせて 突然の事でテッちゃんは驚いてるけど 俺はとりあえず そこに 痕をつける それを指で辿って 『これが、俺の愛の証』 そう言うのが、今出来る精一杯の償い 今までの分も含めて 「・・・・・・・・俺、ハイドの事信じてええ?」 ・・・・・・当たり前やん 声には出さないで、軽く口付ける テッちゃんが、ふっと笑顔を見せた 久しぶりに見た気がする 「・・・・おやすみ」 そう言って、テッちゃんが俺の頭を撫でた 「・・・・おやすみなさい」 ぎゅうって背中に回した手に力を込めて。 俺もテッちゃんも、眠りにつく事にした。 ――もうすぐ、ひずんだ世界の出口が見えてくる そしたら二人で 抜け出そう? +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ COMMENT ふふふ。。。v葉月様から頂いちゃいましたぁvvv もう、無理言って、送っていただきましたv(笑) もう、めっちゃ素敵v シリアスも入った、この精神的なとこが・・・ 私、ニ面性あるてち大好きなんでv 個人的に、こういう小説大好きなんでv 葉月様の書く小説、かなりツボでございます!! 私もこんなかっこええ素敵小説書けるようになりたいでふ。 是非是非、伝授して下さい!!(><) ・・・そしてまた是非私に提供を・・・・グフッ!?(殴) 戻る。 |