thought to tell 「何、ガクどうしたの?」 「え?」 斜め上からかけられた言葉に顔をあげれば 不思議そうに見下ろすユウの顔。 「何が?」 質問を質問で返せば、少し珍しそうな顔で返答が返る。 「なんか珍しくガクが緊張してんなと思って」 普段のガクトとは違う雰囲気に、ユウはなんとなく気になったらしい。 首をかしげながら、頬杖をついたままのガクトの隣へと腰を下ろす。 「今日ね、ハイドに逢うんだ」 昨日慣れないながらもメールをしたら、案外二人とも近くで仕事をしているようで 予定が終わったらハイドがこちらへと来ることになっていた。 「へぇ、良かったじゃん」 返ってきた何の変哲もない台詞に間が抜けた。 それにしては、いつもと態度が違うな、と感じながらも なに、それで緊張してんの?と少しからかい半分でユウは笑う。 「違うんだよ」 「は?」 隣で笑うユウの顔も見ずに、頭を抱え込んだガクト。 ユウは思わずこぼれた声だけを残して、次の言葉を待つ。 「ハイドに・・・言おうとおもうんだ」 自分の気持ち。 そう告げてから、ゆっくりとユウのほうを見た。 先ほどまでの軽い笑いとは少し違うけれど、 笑みを称えるユウの顔。 「いいんじゃない?」 想ったよりも短い返答に少々不安を感じて 「本当にそう思ってる?」 問い詰めるように言い寄るガクトに、 「本当本当、つーかやっぱり言ったほうがいいと思うし。」 というか、実際周りから見て二人はとっくにそういうもんなんだと思うんだけど・・・ まぁ、ガクはこうだし、ハイドさんだってまぁガクのこと少なからず・・・ なんんてことを頭の中で巡らしながらも、口にはまだ出さない。 「なぁに緊張してんだよ!!」 いまいち踏み切れていないガクトの背中をバンバン叩き 「いつもの調子で”愛してる”とか言って、こぉ押し倒せば・・・・」 そういってぐぃと肩を押してソファへと倒し込む。 「ちょっ・・・ユウ!?」 いつになく慌てるガクトに、悪戯な笑みを浮かべ 「な?ちょっとはドキっとしただろ?ハイドさんだってきっとー」 そんなことを言うユウに、少なからず抵抗心を燃やしつつ 「別に、僕はハイドとそういう事をするのが目的じゃないもん・・・」 そう強気な事を言ってみる。 「分かってるよ、ただきっかけとしてさー」 未だ馬乗りになったまま、アドバイスを続けるユウに 「とりあえず退いてよ・・・重いっ」 そう言って、覆い被さる胸を押し返そうとした時・・・ −−−がちゃ え・・・がちゃ? 小さく聞こえたその音のほうを見れば、 瞳は一人の姿を映した。 「ハイド」 呼びかければその大きな瞳が瞬く。 慌てて立ち上がりハイドの下へと駆け寄る。 立ち尽くしたままの彼はまだ呆然としている様子。 それはそうだ・・・ドアを開けたら大の男が2人こんな体制でソファの上で・・・ とりあえず部屋を出ようと促し手をひいく。 放心状態だった意識が不意に戻り、びくりと体が震えた。 楽屋から出て、とろあえず誤解を解こうと弁解を図る。 「あの・・・ハイドさっきのは」 先ほどの反応からして、ハイドは何か勘違いしているのは分かる。 ここはなんとしても誤解を解かねば。 言い訳がましいような気もしたけれど、本当に誤解なのだから仕方がない。 「大丈夫」 「え?」 ハイドは顔を前に向けたまま言葉をこぼした。 目を合わせようとハイドの表情を覗くけれど うまく交わされる。 「大丈夫、俺は偏見持たへんから」 不意に顔をあげたハイドが、ガクトのほうを見た。 「はあ?」 それって、僕とユウがってこと? ガクトは理解しきれない頭の中で、血の気が引いていくを感じた。 「ごめん、俺用事思い出した!」 「ちょ・・・ハイド!!」 呼び止めようと出した腕をさらりと避けて、ハイドは小走りに走っていった。 一人残されたガクトは行き場のない不安感を抱えたまま ただ呆然と立ち尽くしていた。 ** はぁ・・・ 「何度目だよ」 茶々達も心配してるぞ、と 隣から怪訝な目線を送られる。 それも無理も無い。 ボーっとしては、ため息をつく。 ここ一週間、それの繰り返しだった。 さすがプロというのか、仕事はいつもどおりのクオリティで仕上げつつも 話をすればどこか上の空で・・・ 「もう一週間だよ・・・ハイドと話せなくなって」 肩を抱え込んだまま机に突っ伏して呟くガクト。 普段では見せないその落ち込みように、隣でユウが苦笑する。 「避けられてるんだよ。絶対。」 彼にしては、あまりにもネガティブな考えに少々不安になったユウが フォローを促す。 「ハイドさんだって忙しいんだって」 けれどいざとなるとそんな曖昧な言葉しか出てこない。 それに加え、これまた曖昧なユウの笑みが不快を煽る。 先ほどの言葉をフォローとは捉えずに、拗ねたようにまた呟く。 「忙しいからって、携帯にも出ないの?メールも?」 そう、あれから何度か携帯に電話を入れた。 けれど受話器から聞こえてきたのは全て留守電のアナウンスで 一度もハイド自身が出たことは無い。 余り執拗にするのもどうかと思ったけれど、 どうしても彼と話がしたかったから、メールを入れたりもした。 それでも、彼自身からの返信は一度も無かった。 伝えたいことがあるから、こうして彼と話がしたいと思っていたのに ここまで避けられているとこの想いを伝えて良いのか不安になる。 ハイド自身の気持ちは本人しか分からないのかもしれないけれど ガクトとユウの関係を勘違いして、そのことを含めつつ避けられているのだとしたら、 想いを告げた所で、返答は明らかに絶望的だろう。 そんなことを頭の中でリフレインさせ考え、肩を落とした。 「まぁ、でも今日合えるじゃん。」 ユウの言葉にびくりと震えた。 今日は音楽番組の収録日、偶然にもハイドもその音楽番組に出演することになっていた。 普段なら予定を考えずに逢える収録は嬉しいかぎりなのに、今回は理由が違う。 こんな状態で彼と顔を合わせるのを喜ぶべきなのか、焦るべきなのか・・・。 ** 仕方無い・・・俺が人肌脱いでやるか。 未だに放心状態のガクトをおいて、ユウは楽屋を出た。 スタッフを呼び止めて、部屋を訪ねる。 目指すはハイドの楽屋・・・ 「まだ帰ってなければ良いけど・・・」 そう零して足を速めたユウの視界に、その人影が目に入る。 「ハ、ハイドさんっ!!」 前を歩くその腕を掴んで呼び止める。 振り返った、その顔に思わず戸惑う。 えっ・・・な、泣いてたっ? 「・・・何?」 ハイドはそのまま隠すように顔を逸らし、目線を外した。 予想外の出来事に動揺したままユウは事を伝えようと話し出す。 「あ・・あの、お節介かもしれないけど・・・ ハイドさんにはちゃんと言っておかないとと想って・・・」 精一杯言葉を選びながら、更に話を進めようとした所 「・・・・・や・・・」 「え?」 耳を傾けようとすれば、いきなり胸ぐらを捕まれた。 「本っまにお節介や!!」 そうもう一度強く言ったハイドは、そのままの勢いで話し出した。 「俺はユウ君達みたいにがっちゃんのjobでもなんでもあらへん!! がっちゃんにとってもただの友達やってん!!そんな俺にオドオドすんなや!!」 普段のおっとりした雰囲気のハイドしか見ていないユウは、 ただ呆気にとられたままハイドを見る。 「俺はっ・・・俺には別にがっちゃんとユウ君がどないな関係でも関係あらへんっ!!」 えぇぇえぇぇぇぇーーーーー!? 「ちょ・・・ちょっとハイドさんっ」 もの凄い勢いで捲し立てられて、なされるがまま聞いていたユウ。 明らかに誤解だと確信し、慌てて弁解を試みるもののハイドの勢いは止まらない。 「俺なんかに気ぃ使ってへんで、がっちゃんとこおったらええやろっ!!」 留めのとばかりに思い切り叫んだハイド。 今にも泣きそうな顔で最後にこう言った。 「もぉ俺の前に顔みせんといて!!がっちゃんにも言うといて!!」 「えっ・・あのっ」 ユウに弁解をする間も与えず、そのままハイドは走り去る。 そんなハイドの背中を呆然と見つめたまま、ユウは小さく呟いた。 「ハイドさん・・・それじゃぁ完全に”ヤキモチ”だってバレバレだよ・・・」 ** ハイドから言われた言葉に、少しのショックと、大きな確信を抱きつつ ユウは、ガクトの居る楽屋へと戻った。 未だ、テーブルに突っ伏したままのガクトを見ながら、 先ほどまでのハイドの行動を思い出し、 ユウは内心小さな溜息を零す。 そして口中で小さく呟いた。 「ガク、おまえって案外鈍感なのな。」 「はあ!?」 なんで気づかないかね? ああ、それを言うなら向こうもか・・・ ガクの態度だって見てれば分かるだろ。 ・・・二人してなんで気づかないかなぁ・・・ ユウは目の前で繰り広げられている活劇に思わず笑いが零れた。 喉を震わし小さく笑えば、 「何?・・・もとわといえばユウがあんなっ」 食って掛かろうとするガクトに、ユウは余裕の表情で宥める。 「まぁ、まぁ、・・・ハイドさん所行って伝えてこいよ」 ぐいと背を押して、ドアの前へと押しやる。 腑に落ちないやり取りに顔だけユウのほうへと向けるガクト。 「言える訳無いじゃない・・・こんな状態なのに・・・」 そこまで押しても未だ自信の無さそうなガクトに 「このままなのも嫌だろう?」 大丈夫だから行ってこいよ、 と、またぽんと背中を押す。 自分自身では根拠の分からない太鼓判を押されながら、ガクトは楽屋を後にした。 きっとハイドもまだ楽屋に居るだろう。 部屋の場所も分かっている、けれどまだ足が重たい。 今までこんなこと一度も無かったのに・・・ 初めてこんな状態になって、どれだけ強く想っていたのかを実感するガクト。 不安というものは消えなかったけれど、けれど心の中でどこかが変わった。 このまま誤解されたまま過ごしていくのも嫌だし、 拒まれるのが怖いから、とこのまま自分の感情を偽ったままハイドと接していくのも嫌だ。 きちんと、この気持ちを伝えた上で またハイドと今までと同じように過ごしていきたい。 返事がNOにいろYESにしろ ハイドにだけは気持ちを偽りたくない・・・ そう心の中で決心がついた頃、丁度ハイドの楽屋へとついた。 ドアの前に立ち、逸る気持ちを落ち着けようと深呼吸をひとつ。 「がっちゃん?」 ふと少々斜め下から遠慮がちな声が聞こえた。 姿を見なくとも分かる。 その呼び名でガクトを呼ぶのは一人しかいない。 そして何より愛しいその声。 「ハイド」 ずらした視線が捉えた彼は一瞬困ったような顔をして、 その瞬間、ガクトの腕がハイドの腕を強く捕らえた。 どうしても伝えたい想いがあるから・・・。 今度は逃げられないように、 「---何・・・痛っ!」 一瞬怯えたような顔をしたハイド。 その瞳はどんな姿を映しているの? 「話したいことがあるんだ・・・」 掴んでいる腕の力は弱めずにそう告げれば また少し眉を歪めて俯いた。 「聞いてほしいんだ、ハイドに・・・」 だから、逃げないで・・・ 「・・・分かったから、離して・・・痛い・・・」 俯いたまま言った彼。その姿はとても儚く見えた。 それとも怯えているだけなのか・・・ 楽屋へと入った二人。 ガクトは向かい合うようにハイドを座らせ、話し出した。 「ハイド、僕のこと避けてるよね?」 俯いたままのハイドは一向に目を合わせようとしない。 けれどガクトはそのまま、淡々と話を進めていった。 「その理由がこの間のユウとのことなら・・・」 その名前を出せば、ハイドの体が一瞬震えた。 きっと態度には出さないようにしていたのだろうけれど・・・ そのハイドの反応をみて、やっぱりとため息を漏らす。 「僕とユウは別にそういう関係じゃないよ、あれは完全に誤解なんだ」 ここまで真剣に伝えれば、誤解だと分かってもらえただろうと少なからず安心をしながらも、 けれど避けられていた理由が明らかになったところで、 これから自分がこの気持ちを告げてもうまくいかないだろうという思いがよぎった。 それならば、告げないほうが良いのだろうか・・・ そうすればまた、ハイドと今までと同じように付き合ってゆける。 「だから・・・だから、これからもまた前と同じように・・・」 「それはできひん」 「え・・・?」 切り出した言葉が、ハイドの言葉によって遮られる。 思いもしない否定の言葉に戸惑うガクト。 「それは無理や・・・」 どうして・・・ 「俺・・・今回のことで気付いてん・・・」 妙に時間が流れるのがスローモーションに感じた。 「俺な、・・・がっちゃんが・・好きや。」 そしてゆっくりと顔を上げたハイドはガクトを見つめた。 「え・・・」 「ユウ君とがっちゃんを見た時、正直びっくりしたっていうのもあったけど ・・・それよりも凄くショック受けてる自分がおってん。」 表情を歪めながら、静かにhydeは話し出した。 「それで気づいたんや。俺はがっちゃんのことが好きやねん。 ・・・せやから前みたいに”仲良くお友達でいようね”って訳にはいかれひん・・・」 そしてとても辛そうな表情で、ただ”ごめん”と誤り、また俯いた。 「ははっ、参ったな・・・」 「ごめ・・・」 「先に言われちゃった」 小さく謝りかけたハイドの声を遮った僕の言葉に、ハイドが顔をあげた。 その顔を今度はガクトが見つめながら、やわらかく笑った。 「僕のほうから言いたかったのに。」 「え・・・?」 あまりにも予想外だったのか、未だに把握しかねているハイド。 その瞳を見つめながら、想いを告げた。 「ハイドのこと好きなんだ」 「・・・うそや・・・」 「嘘なんかじゃない、冗談でもない・・・僕もハイドのことが大好き。」 放心状態のハイドの体をそっと抱き寄せて、唇へそっとキスをする。 唇を放しても、しばらく放心状態のハイドに 「やっと、伝えられた。ずっと抱いてた想い。」 そして、また優しく微笑んだ。 その笑顔に、ハイドの表情が歪んで、胸へと顔を押しつけてきた。 「ハイド?」 「・・・ぅれしぃ〜っ」 シャツを掴んだまま、ハイドは満面の笑みを浮かべてしがみつくように抱きついた。 そして顔をあげて、恥ずかしそうに笑った。 その笑顔が嬉しくて、微笑み返して抱きしめた。 抱きしめたまま、 「もー、ハイドってば誤解してそのまま行っちゃうんだもん」 どうしようかと想ったよ。と、ほぉっとため息をつくガクト。 「せやって、ドア開けてあんな所見たら、誰やって誤解するって!!」 自分の早とちりが恥ずかしいのか、頬を染めながらそうぼやく。 そんなハイドをちらりと目線を向けて、 「うーん・・・でも僕としてはハイドをこうしたい気分なんだけど・・?」 そう言って、抱きしめたままハイドの体を浮かせ、組み敷く形に。 「うわっ・・・ちょっ何すんねんっ」 慌てて、その腕から抜け出そうとするけれど がっちりと押さえつけられていて動けない。 恥ずかしいような、困ったような表情を浮かべたままのハイドを見下ろして、 「愛を確かめあおうかと・・・」 またふわりと笑ったガクトは、そっと額へと口付けをした。 その口付けを受けて、更に頬を染めながらも。 「阿呆かっ///」 そう小さく毒づきつつも、笑うハイド。 そしてまた唇を合わせる。 一回目の口付けとは逆に、お互いを求めるように。 二人の意識が溶け合っていく。 口付けを交わしたまま、手が起用にシャツのボタンへと伸びる。 与えられるやわらかいキスに酔いしれていたハイドの頭にふとあることがよぎる。 「・・・ん、、、ぁあ!そうやっ!」 いいムードになってきたところを、急にハイドが大声を上げて飛び起きた。 「・・・?」 「が、がっちゃん!!こんなことしてる場合ちゃう!!」 「え?」 「俺、ユウ君にひどいこと言うてもうた!!あやまらな!!」 「ユウなら大丈夫だよ、それよりこんな時に他の人の名前なんて出さないでよ・・・」 少し怪訝そうに眉をひそめて、またハイドの体を押し倒そうとするガクト。 ハイドはその腕を払い、 「あかん!!そういう訳にもいかへん!」 「・・・」 「がっちゃん!!楽屋戻ってユウくん引き留め説いて!!」 そういって、慌ただしく服を直し始めるハイド。 「・・・わかったよ」 そして、ハイドより一足先に楽屋に戻ったガクトは、ユウの顔を見るなり・・・ 「ユウのバカ!!」 「な、何だよ!?」 最終的に2人の間を取り持ったのに何故馬鹿呼ばわりされるのか、 その時ユウは知るよしも無かった。 end. +-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+ COMMENT 初々しく、ガクちゃんとハイちゃんの馴れ初め話。 なるべくhydeさんを泣かせないように、泣かせないように・・・と頑張りました。 hydeさんの乙女化を防がねばね。 これは結構前から書いてたのかな。 とりあえず更新せねば・・・と頑張って仕上げました。(^^; でもこういうすれ違い系は好きですねぇ。誤解とか。 最終的には甘々で納まっちゃうんですけどね(笑) ちょっと切なく最後は甘くを目指して小説書いてます。 なんだかいつも同じような展開になってしまっていますが・・・ 良かったら読んだ感想なんかも聞かせてやって下さいねー。 Heavenly Feathers 戻る。
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